スネ夫の従兄が作ったラジコンロボ「ミクロス」(声・三ツ矢雄二)に対抗したいのび太は、巨大ロボットを出してくれとドラえもんに頼み込むが断られる。その後、のび太は北極で奇妙な球体と、次々に送られてくる巨大ロボの部品を発見する。喜ぶのび太だが、それはドラえもんの物ではなかった。ザンダクロスと名付けられたそのロボットが恐ろしい兵器を内蔵していることを知り、ドラえもん・のび太・しずかはそれの存在を3人だけの秘密にし、鏡面世界に隠した。だが、謎の少女リルルに追及されたのび太はザンダクロスと鏡面世界を渡してしまう。リルルはロボットの惑星・メカトピアの使者であり、鏡面世界に地球侵略の前線基地を作りはじめた。鏡面世界の入り口が破壊されることで地球は救われたかに見えたが……。
前にも言いましたが、メカトピア兵団は『魔界大冒険』の悪魔に対応する存在です。というのは、他にいないんです。大長編『ドラえもん』で地球侵略計画を実行しているのはメカトピアと魔界星だけです。『宇宙漂流記』の銀河漂流船団はアンゴル・モアが暗躍して地球侵略計画を進めていましたが、企画段階で倒れていますし、船団自体が一惑星の文明とは言えない混成部隊です(一応、惑星ラグナという星の出身者が主力のようですが)。『銀河超特急』のヤドリは銀河系を攻めましたが、地球という惑星は認知していませんでした。他の宇宙人たち(コーヤコーヤ、ピリカ、チャモチャ、アニマル惑星など)は、いわば内戦をしていたに過ぎません。
それにしても二足歩行ロボを造るとは、スネ夫の従兄――本編には出てきませんがスネ吉という名前――は凄い、天才です。20世紀では大変な技術ですよ。もう単なるラジコンマニアではなく、ロボット工学者の域に達しています。これにドラえもんが改造を加え、自分の意志で動き、会話も出来るロボットになりました。
その改造後のミクロスですが、似てますね。あの水中バギーそっくりです――声が。同じ発声装置を使用しているとしか思えないほどに。性格もよく似ています。調子に乗りやすい点、しずかにくっつく点、臆病者ですが、感情が高ぶると暴走気味の勇気を発揮する点など、思考回路も同じものを使っている可能性があります。ということは、バギーもドラえもんが改造したものか、あるいは造り起こしたものなのかもしれません。ドラえもんがその手の装置を玩具の猫に注ぎ込んでロボットにしたこともありましたし(*1)、未来ではこういうキットが量産されているんでしょう。ただし、現在のメカのようなややこしい接続は必要ないようです。このことは、スネ夫が『改造後に』アカンベー用の舌を取り付けさせていることから分かります。いくらスネ吉が天才でも、22世紀のコンピュータを理解して接続できたはずがありません。接続無しで、取り付けたものの機能を自在に使えるようなコンピュータが採用されています。くっつけるだけで縫いぐるみでもロボットにできる「ロボッター」みたいなもんですね。
しずか達はタイムマシンで3万年前のメカトピアに行きました(タイムマシンにワープ機能があることが判明)。3万年というのはリルルの「このあいだ建国3万年をむかえた」という情報に基づくものです。
この時点で、アムとイムという初期のロボット達はほぼ人間に近い(「いい子」だそうだ)コンピュータを持っていたようです。そしてリルルや他のロボット達も、知能は人間と大差ありません。ではメカトピアの情報科学技術は、3万年間進歩しなかったんでしょうか。現代の地球にバイオテクノロジーに対する反発があるように、メカトピアにもロボットの頭脳を改造することに対して抵抗があるんですね。神の領域ってやつですか。しかし、地球の科学史を鑑みるに、宗教的反発だけでは科学の進歩を止めることはできないようです。遅らせることは出来ますが。地球では考えられないほど宗教の浸透が強かったのでしょうか。いや、それならリルルはあんなに迷わなかったでしょう。宗教より「自分らより優れた存在が生まれることへの恐怖」という、世俗な理由が大きかったのでしょう。これは宗教関係者だけでなく、誰にとっても脅威ですからね。
ちなみに、しずか達が3万年前のメカトピアを見渡すシーンに、リングのある星が大きく映っています。つまり、メカトピアは衛星だったのです。リングよりかなり外側の軌道を廻っている衛星であることが分かりますね。
そしてこの作品は、歴史の変更で消えたはずのリルルがのび太の前に姿を現すところで終わります。鉄人兵団の尖兵としてのび太やしずかと接触した記憶があるはずはないのに。しかしその後、メカトピアからの公式なコンタクトはもちろん、リルル自身さえ、2度とのび太達の前に姿を現した形跡がありません。じゃあ、彼女はいったい何をしに来たのでしょう?
じつは彼女は、地球とメカトピアが交流すべきかどうか、地球人の性質を調査に来たのではないでしょうか。メカトピアが地球にコンタクトを取ってこなかったところを見ると、どうやら我々は(今のところ)失格であったようです。天使のようなロボット達から見ると、やはり我々は闘争本能を剥き出しにした野蛮な動物であるのでしょう。
しかし、諦めることはありません。いつの日か、我々が「天使のような」生命体になれた時、ふたたび彼女の笑顔を見ることが……。
(*1 てんとう虫コミックス14巻「すてきなミイちゃん」 ドラえもんが玩具のネコに恋し、苦心の末に手に入れて自動えさたべ装置、自動歩き回り装置等々を付けまくりロボットにする話。いよいよプロポーズするドラえもんだが、返事は「ボク男ダヨ」。ドラえもんが雄的人格の思考回路を組みいれてしまったものと思われる。例えばロボッターは、動物の縫いぐるみに付けた時はちゃんと四足歩行をさせ、『宇宙小戦争』で少女の人形にくっついたときは人間らしい二足歩行をしていた。この場合は、取りつけた物の造形に合わせて自動的に動き方を判断しているのだろう。しかし、このネコの場合は違うようだ。このネコは子どもの玩具であって、性器などが再現されていたとは思われない。それにドラえもんが惚れたからには、どちらかというとメスっぽい造形だったのだろうから、最初からオス用の機械を使ってしまったのだろう) |