のび太の宇宙開拓史 『のび太の宇宙開拓史』(1981)
 
  地球から遠く離れたコーヤコーヤ星開拓民の少年ロップル(声・菅谷政子)。彼の故障した宇宙船フレンドシップ号の倉庫扉と、のび太の部屋の畳が偶然に超空間で繋がった。のび太とドラえもんは宇宙船を修理し、コーヤコーヤ星へ帰れるようにしてやった。ロップルやその家族と仲良くなった二人は、しばしばコーヤコーヤへ遊びに出かけるようになる。しかし、開拓民は鉱石をねらう悪質な大企業・ガルタイト鉱業に執拗な嫌がらせを受けていた。コーヤコーヤ周辺の惑星群は重力が小さく、住民は地球人より遥かに低い体力しか持っていない。二人はその力を活かし、ロップルを助けてガルタイト鉱業に立ち向かう。  
 

  まず、今回の舞台となるコーヤコーヤ星付近の宇宙について、簡単に復習してみましょう。 
  位置は地球からものすごく離れた遠宇宙です。ロップル達は見た目は地球人と変わりませんが、トカイトカイ星という惑星を故郷に持つ種族です。この周辺の星系では、おそらく全ての惑星がガルタイト鉱石という反重力を生み出す物質を大量に含んでいるため、重力が非常に小さく、住民の体力も地球人に比べると発達していません。ガルタイトは手軽に使えるので、石器時代から彼らは反重力で飛んでいました。のび太達が行った時点では、この文明は自分達の星系から脱出して近隣の星系に新天地を求める段階にあるようです。 
  反重力鉱石? 
  いくら遠宇宙でも、そんなものが自然に造られ、普通の惑星に大量に埋まっているはずはありません。しかし、現にコーヤコーヤ星の主成分はガルタイトです。結論はおそらく一つ。すなわちガルタイトとは、はるか遠い昔――コーヤコーヤ星もトカイトカイ星も、彼らの太陽さえ生まれる前――近隣の宇宙に存在していた超々古代文明の遺産なのです。何らかの理由で、この超々古代文明は消滅したか、移動しました。大量の反重力物質を残して。それが星系の形成過程で混ざったに違いありません。 
  超々古代文明の行方は全く分かりません。健在だとすれば凄まじい発展を遂げているはずなんですが。後に出てきた宇宙人達にその名残を期待したくなりますが、残念ながら「彼らこそ後継者!」と言えそうな連中はいませんね。どいつもこいつも二十二世紀の地球より技術レベルが低い。かろうじて候補に挙がるのは『ねじ巻き都市冒険記』で出会った「種まく者」ぐらいでしょうか。この……なんだか分からないものは、原始地球に生命の素となる有機物質をもたらしたそうです。不定形で自由に形を変えることができますが、とくに飛行形態も取らずに宇宙へ去って行きました。 
  さて、宇宙の行方不明者はまだいます。ロップル達の文明です。ドラえもんは「コーヤコーヤ星なんて聞いたこともない。よっぽど遠い星なんだなあ」と言っています。ドラえもんはけっこう学があるんです。その彼がコーヤコーヤを知らない理由は、三つに分けて考えられます。 
  すなわち、 
  1. 地球から発展した文明とは接触せずに存在している。 
  2. 名前が変わった。 
  3. 滅びた。 
  どれが適当でしょうか。とりあえず1をチェックするため、まず二十二世紀の地球発文明がどれくらい遠宇宙に進出しているのかを考えてみましょう。 
  銀河系全体は確実です。支配しているかどうか知りませんが、交流は持っている。その証拠に「銀河の果ての果て」にまで遊覧銀河鉄道が通っているんです。また立体天球儀みたいな道具もあります。この天球儀はなんと、中の星に入れます。「反地球」(*1)に行ったときのエピソードですね。こんな天球儀がある以上、地球から見えるような星は全て制覇しています。 
しかし二十二世紀にも未知の宇宙生物の侵略事件がある。つまり宇宙全体までは調査が及んでいないということです。これは『のび太と銀河超特急』の事件で、侵略者は銀河系の外からやってきます。が、ドラえもんと同等以上の科学力を持っているようには見えないんです。というわけで地球発文明も銀河系外に進出していることは間違いありません。銀河系外のどこまでか、それは資料不足で分かりません。とにかく以上のことから、1だとすればコーヤコーヤは確実に銀河系外にありますね。 
  ちなみに、地球発文明と接触はしているが、無名の星のためドラえもんが知らなかった――という可能性はおそらくありません。「反重力鉱石を自然に含む星系群」が有名にならないはずがないからです。単に鉱石が珍しいだけでなく、その環境に適応した生物や文明などが研究対象になります。惑星間飛行をする渡り鳥がいますから。こんな星が発見されたら、学問的に大ニュースになるはずです。 
  2についてはあっちの人の気まぐれ、も否定はできませんが、何者かに侵略された可能性が高いでしょう。狙われたら最期って感じですから。地球の歴史を参考にすると、地名なんかがいきなり変わるのは大抵が侵略者の仕業です(実態が変化していれば別ですが)。 
  3は……実は、かなり可能性があります。コーヤコーヤ星系(*2)は時間の経ち方が違います。理由は分かりません。ガルタイトの存在が時空を歪めているのではないでしょうか。もともと重力とは物質の存在による時空間の歪みですから。ともかく、地球の数日がコーヤコーヤの約一年。ドラえもん誕生が2112年ですから……。文明の一つや二つ滅びても不思議ではないくらいの時間が経っていることでしょう(*3)。 

(*1 「地球そっくりだが全てがあべこべの星」と語られているが、のび太達の勘違いだろう。この惑星ではジャイアンらしき少女がスネ夫らしき少女に乱暴され、泣きながら逃げるシーンがある。つまり人間の性格(と性別)は逆……と思いきや、しずからしき少年は優しい性格のままである。また犬と猫の鳴き声が入れ替わっているが、それって「あべこべ」なのか? 単にものすごい偶然で地球に似た星を見つけただけだと思う) 
(*2 本当は「〜星系」という呼び名には、「太陽」系のように恒星の名称が入るべきなのだが、彼らの太陽を何星と呼ぶのか分からない) 
(*3 「宇宙へ電波を発信できる程度の文明の平均的寿命」について、もっとも悲観的な予測値は百年程度とされている) 

 

 

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