のび太の日本誕生 『のび太の日本誕生』(1989)
 
  偶然にも同じ時期に「家出」をしたいつもの5人は、人の手の入っていない土地を求めて7万年前の日本へ旅立つ。未来の道具ですみかを作り、原始人ルックで楽しく過ごすのだった。しかし、一旦戻った20世紀で、なんと本物の原始人の少年を発見する。ククルという名のその少年は、時空乱流にすい込まれ20世紀に現れたのだった。ククルの故郷は奇しくも7万年前の中国。ククルの一族ヒカリ族は、謎の精霊王ギガゾンビひきいるクラヤミ族に拉致されていた。ドラえもん達はギガゾンビの正体を、原始人の呪い師と推定し、ヒカリ族救出に向かうのだが……。
 

  この作品で初めて、時空乱流という概念が出てきました。ドラえもんによれば時の流れにできる落とし穴で、すい込まれた者は永遠に亜空間をさまようか、運が良ければどこかの時代に出ることもある、とのことです。 
 ところで、亜空間って何でしょう? 
  「え、のび太の机の中の、タイムマシンが浮かんでいるところじゃないの?」と思われるでしょうが、あれは超空間、または時空間と呼ばれています。考えても見て下さい。超空間を地球の大気が満たしていると思いますか? 超空間=亜空間だとすると、生身で放り出されたククルは「永久にさまよ」っている暇などありません。破裂して終わりです。のび太達が平気なのは、タイムマシンの周りに見えない壁が張ってあって、空気を閉じ込めていると同時に、搭乗者が落ちた時に支える役目をしているからです。でなければ、のび太に勝手に使わせるのは余りに危険すぎます。この壁はガラス板のようなものではなく、何かのエネルギーで成り立っているフィールドでしょう。だから恐竜ハンターに撃たれた時も貫通はしましたが、破壊されることは無かったわけです。 
  もちろん、亜空間にだって地球の大気があるわけではありません。大気は勿論ないのですが、亜空間では時間の流れそのものも無いのです。これが超空間(のび太の机の中)と大きく違うところです。超空間では、タイムマシンの乗組員は普通に時間が流れているように感じられます。機会を操作したり会話することができるわけですから。しかし、亜空間では中の人間にとっては全く時間が流れないので、破裂したり窒息したりすることもないというわけです。 
  では結局、亜空間とは一体「どこ」なのか? 仮説として一つ挙げておきましょう。 
  原始人を手なずけて歴史を支配しようとしていたギガゾンビは、タイムパトロールを警戒して「亜空間破壊装置」なるものを研究していました。この機械によって、タイムパトロールは来られなくなるようです。彼が逮捕される時「亜空間破壊罪」が適用されています。未遂ではなくすでに破壊したことがあるのです。あの出入り口の、我々の世界と超空間の境界、あれが亜空間ではないでしょうか。つまり亜空間とは、我々の世界と超空間を移動する橋として、人工的に作られる空間であり、それが自然発生する希な現象が時空乱流なのでしょう。亜空間破壊装置は、タイムマシンの出入り口を発生と同時に探知・迎撃する装置だと考えられます。ゲート(亜空間)がどこか分かっていれば破壊するのは簡単で、タイムパトロールから逃げる際にでも使った時の罪を適用されたんでしょう。 
  ギガゾンビはなにしろ23世紀の時間犯罪者で、22世紀のドラえもんより格上の科学力を持っているんですね。4人から一旦はぐれたのび太が不確定要素にならなければ、ギガゾンビは歴史の支配者になることに成功していたでしょう。
  そして、この戦いに大活躍したのがペガ・グリ・ドラコという3匹の幻獣です(種類は名前で分かるでしょう)。のび太がペットとして「クローニングエッグとアンプル」から産み出したものです。ペガサスやグリフィンや竜のアンプルがあるわけではなくて、白鳥と馬のアンプルを組み合わせてペガサスのペガ、というふうにのび太が工夫して創り出したものなのです。
  そううまく行くでしょうか?無理です。現在の遺伝子工学が白鳥の翼を馬の背中につけたとしても、飾りにしかなりません。鳥が空を飛ぶために進化したのは、翼の部分だけではないのです。前足を動かす強力な胸の筋肉、全身の徹底的な軽量化などがあって初めて鳥は飛べるのであって、白鳥の前足を馬の背中に生やしただけでは飾りにしかなりません。 
  ただ飛ぶだけでも不自然なのに、3匹の飛行能力は凄すぎます。ククルを加えたのび太達6人は、ヒカリ族の村あとがある和県(ホーシェン)まで、ペガたちに乗って移動しています。朝に出発して同日の夕方には到着していますが、和県までの距離が2000kmと言っているので、所要時間を12時間とすると……時速160キロ以上! 一匹に二人ずつ乗ってですよ(*1)。 明らかに、こういう生まれ方をした動物がきちんと飛べるように、未来の科学力が発動しているのです。「馬と白鳥を組み合わせるとペガサスができる」とかが、裏ワザとして最初から組み込まれていたわけですね。  
  もう一つ不思議なのは、3匹に対するドラえもんの扱いです。この3匹は結果的には活躍しましたが、もともとギガゾンビとの戦いに備えて作られたのではありません。あくまでもペットです。「すぐに育つよ」とドラえもんが出した「万能ペットフードグルメン」を与えられて一日で大きくなりました。しかし……、単なるペットを急激に育てる必要があるんでしょうか? ピー助の時も成長促進剤を出していますし、同種の薬に「アットグングン」というのもあります。ピー助はスネ夫に見せるため、速く成長させる必要があったわけですが、3匹については謎です。未来には成熟した動物を愛する風潮でもあるんでしょうか?
 
 (*1 しかも、見たところ一番小さなグリが、ドラえもん+ククル組を乗せている。ドラえもんの体重は129.3kg、小学生なら約3人分あるので、ククルを加えて160kg以上の荷物を背負っていることになる。ドラコならまだまだ余裕があると見て良いだろう。) 
 
 

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